天使と悪魔の子
ラミアと私は一定の距離を保って顔を見合わせる。
「君、愛されているんだね。」
『……』
「どこにそんな魅力があるのか、全くわからないな。」
笑顔を崩さず話す彼は、テレビドラマに度々出てくるサイコパスのようだった。
『なんの話?』
「……口を慎め」
『…っ』
とんでもなく低い声が聴こえた瞬間、今まで作られていた笑顔はなくなり殺気というものが嫌でも伝わった。
少しでも動けば、首を跳ねられてしまいそうな……そんな恐ろしい全身に毒蛇が巻きついているかのような不快感。
今にも噛みつかれそうだ。
いや、違うこれは
“本物”
ーシャーッ
大蛇が私に絡みついて、私の首の横あたりに顔がある。
重さに耐えきれず、私はそのまま地面に崩れた。
「俺の得意魔法なんだ。それは幻術、でも恐怖を感じれば本物と同じように君を壊す。」
これが、幻術……?
縛られている痛みも、全て本物のようだ。
もがけばもがくほど、苦しくなる。
「唯一魅力的なのは、君の血、かな?」
ラミアが私の上に重なると、蛇は何処へともなく消える。
きらきらと金髪が輝いて、冷酷な瞳は私を捉えて離さない。
生暖かいものが首に触れたと思うと、次にはなにかが刺さった。
『んぁ……』
思わず漏れる声
嫌なのに、悪魔の毒が身体をおかしくさせる。
宙
嫌だよ
助けて
レリアスに襲われた時には抵抗出来たのに、全く抵抗出来ない自分が悔しい。
「はぁっ」
ーゴクッゴク
次第に体から力が抜けて、完全に人形状態。
『やめ……っん』
口を抑えられてもう何も出来やしない。
助けて
助けてよ
誰か
いつの間にか涙が頬を伝った。
「君の血、最高だね。」
『……っ』
「なんで泣いてるの?」
『ふっぅ…』
こいつにはなにを話しても理解されない。
そう感じた。