天使と悪魔の子

部屋に戻された私は平気な顔をしてふたりに微笑んだ。

レオリスもミリーナさんも、どれだけ私のために働いているのかわからない。

「……服」

『なに?』

「血の匂いがついてる。」

レオリスは心配そうに私の顔を見ている。

傷は持ち前の回復力で治ったのだがつめが甘かったか。

『せっかくミリーナさんに買って貰ったのに…ごめんなさい。』

「いいのよそんなの。美影、わかったでしょ?
ラミアは私達とは全く違う。冷血で非道で、容赦がないの。」

『そう…だね』

でも

前に夕紀が言っていた。

“誰の心にも、子供みたいな無邪気な自分と殻に篭もった冷静沈着な大人の自分がいる。
大人になるにつれて、その殻は分厚くなって自分の弱さを隠そうとするんだ。”

もしかしたらラミアは、閉じこもってしまったのかもしれない。

臆病で、他人を信じられなくなって、どんどん孤立していってしまったのかもしれない。

今の強さは、弱さを隠す仮面なのかもしれない。

兄弟も誰も頼れないくらい追い込まれたのだとしたら

宙もそうなり得たのだとしたら

救ってあげたい

お節介かもしれないけど、

元から悪い者なんていないって信じてみたい。

自分がこんなことを思うなんて一か月前までは想像もしなかったことで、しつこいようだけどこれは全部宙のおかげだから……今度は私が、宙の兄弟を救ってあげたい。

そう思ったんだ。

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