天使と悪魔の子
翌朝
まぁ窓はないから感覚なんだけど
心做しか騒がしいラミアの邸
ミリーナさんやスは傷が治ったのを見計らうかのように細々とラミアに呼ばれて酷い傷を負って帰ってきた。
『……兄弟でこんなこと…』
「この世界では当たり前のことなの。それに、人間界でもこういうのはあるでしょ?」
これが兄弟喧嘩とでも言いたいのか、ミリーナさんは笑ってみせる。
「おや、元気だね。」
突然ラミアに話し掛けられて空気が張りつめる。
レオリスもミリーナさんも少し怯えているようだ。
「今日は部屋を変えようと思ってね。」
「部屋を変える?」
「どこかの不届き者が、“逃亡”を企てると厄介だからさ。」
ラミアのその発言に、私達は息を飲んだ。
全部知られている。
私は手錠をかけられ、ミリーナさんもレオリスも鎖に繋がれ部屋を出される。
私が乱暴に引かれると、ラミアはその騎士を鋭く睨んだ。
「お前、殺されたいのか?」
「す、すみませんでした。」
それからというもの、細心の注意を払いながら地下室の牢へ運ばれた。
やっとまともな牢屋だ。
いや、はいりたかったわけではない。
ただ拍子抜けした日々が続いていたからなんとなくだ。
「逃げるなんて考えない方がいいよ?」
ラミアがにこやかに言ってから出ていく。
残された私達はほっと肩を下ろす。
「幸い同じ牢屋にいれられたらしい。」
「大丈夫、美影ちゃんだけは絶対に逃がす。」
ミリーナさんが何度もこの言葉を唱えている。
まるで何かを待っているみたいな、そんな遠い目をしながら。
「……レオリス、様」
すぐ近くから、女の子の声が聞こえた。
それは弱々しくて、今にも消えてしまいそうだった。
「シェリーか……?」
レリアスが壁につけられている鎖をがちゃがちゃと動かすが外れない。
前の部屋でも試したが特殊な加工がされているらしい。
代わりに私が立ち上がって隣の牢を見た。
『シェリーっ!!?』
シェリーは血で汚れた服を着て、ピクリとも動かなかった。
酷い、酷すぎる。
傷が塞がっていない。
全体的に悪魔の治癒能力が効いていない。
それほどまでに痛みつけられたのか?
いや、そうに違いない。
「大丈夫、ですか?」
『何言ってるの?シェリーのほうが重症じゃない。』
「いいえ、わだくしなんか…ルリのほうが」
「う"あ"ぁあああああああああああ!!!!!」
私達より下のほう
そこから大きな女性の声が聞こえた。
この声は、ルリ?
「国家の反逆罪で、私達は罰を与えられているのです。」
シェリーの震えた声がだんだん小さくなる。
それを聴いてレリアスは歯をギリッと鳴らした
「あいつら…!!!」
がちゃがちゃと暴れるが鎖は解けてくれない。
ミリーナさんは手を地面に叩きつけた。
「ラミアのやつ、“見せしめ”か!!!」
もしも私達が逃げ出したりなんかしたら
それを企てたりしたら
こうなると
私達に示しているのだ。
『くっ……』
「あああああ!!」
『ルリ…』
私達は昼の間彼女の声を聴き続けた。
夜にはシェリーの……
父から受けた暴力
そのトラウマが、嫌でも甦った。