天使と悪魔の子

「私達は大丈夫です。」

シェリーとルリが隣の牢屋にいる。

ルリがぽつりと呟いた。

「……」

ミリーナさんが手を伸ばしてシェリーの頬を撫でた。

ルリも檻にもたれかかっていて直ぐに触れられる距離にいる。

『ルリ』

私は近くにあった石ころで腕を切る。

「なっ」

レリアスが何かを言いたそうだったが、それより先に、ルリが私の腕に噛み付いた。

でもそれは痛くなかった。

前とは違う、手が震えている。

自我を必死で保とうとルリは葛藤していた。

『これくらい、させてよ。』

私の血は彼等にとって最高のご褒美、そして薬だから。

「はぁ…はぁ…」

ルリはそのまま私から離れて座る。

みるみる癒えていくルリの傷に、ミリーナさんはぽかんと口を開いた。

「まさか、ここまでとは…」

少しでも役に立てるなら、この血を捧げてもいい。

悪魔の大好物はそれだから。

腕の傷が癒えるのを確認して私は地面に転がった。

恐ろしい程静かな夜中だ。

そういえば、悪魔のイメージってすごい変わったな。

初めてザヘルに出会った日は本当に怖くて怖くて堪らなかったけど、今ではこうして手を取り合える悪魔もいる。

全員本来の悪魔はラミアみたいなイメージだったんだ。

そう考えたら不思議

ラミアが怖くない。

「美影ちゃん」

ミリーナさんがレリアスに手を添えながら目を合わせた。

「宙を頼んだわよ」

思わぬ言葉に少し時が止まる。

『はいっ』

その言葉の意味を知るのは、もう少し先の話。

< 146 / 262 >

この作品をシェア

pagetop