天使と悪魔の子

魔王の誕生祭

それが今夜行われる。

目覚めたと同時に部屋を出されて浴場へ誘われ、鏡を見る。

鏡に何を念じても作用しない。

渋々広すぎる浴場で体の汚れを落とした。

今日、脱出に失敗したらどうなるんだろう。

そもそも計画なんてなにも聞いていない。

このまま夜になってしまえば私は…。

怖くて肩が震えた。

宙と離れて1週間、2週間?

でももう彼がいない生活が慣れないものになっている。

今すぐにでも会って抱きしめたい。

これはわがままなのかな?

好きな人の隣にいたいのは…わがまま?

考え事をしていると長く湯船に浸かり過ぎたせいかすこしのぼせてしまった。

ふらふらと脱衣所に行って再度鏡を見ると、思わずぎょっとする。

先程まで宙の魔法で紫色だった髪、オレンジ色だった目がストロベリーブロンドの髪と金色の目に戻っている。

お風呂に魔法がかけられていたのか?

魔法の奥深さに感心しつつも置かれていた服を着てまたもやぎょっとした。

なんだこのペラッペラのうっすい素材の黒いワンピースは……

風邪ひくじゃん

とか冗談は置いておきとりあえずそれを着てバスタオルで身体を覆った。

『寒…』

脱衣所を出ると大きな部屋。

一時的に用意された私の部屋だ。

そこに侍女が控えており私をちゃっちゃと椅子に座らせて髪の毛を弄り始めた。

髪をアップにされて最後に花の髪飾りをつけられ、更にはイヤリングやメイクを施される。

髪の毛短いのに、よく纏められたなぁと感心してしまった。

袖のないレースのボレロを羽織ると完成。

支度が済むとちゃっちゃと外に出されて二日ぶりの空気を堪能する。

「へぇ」

ラミアは突然現れて私の頬に手を添えた。

「化けるものだね。」

私の髪色に興味があるのかそのまま髪に触れて瞳を合わせる。

「月を見てみな」

ふと一日ぶりの空を見上げる。

なに、これ

月が今までにないほど迫ってきている。

この世界とギリギリの場所に、月があった。

あれは月なのだろうか?

人間界の月とは少し違うのか?

少なくともこの世界の月は、欠けることを知らない。

「今のうちに見ておくといい、もう二度と見れないかもしれないのだから。」

『……どうせなら、青空がよかったな。』

「青空?くだらない」

どこまでも澄み渡り色々な姿を見せてくれる

夜の空も素敵だけど

やっぱり君には青空が似合う。



私はここにいるよ。

ラミアを置いてそのまま中に入った。

何故か見張りは少なくて、私も自由に行動できる。

とりあえず皆の顔が見たくて、地下室へ向かおうと階段に差し掛かった時だった。

『んっ!?』

口を塞がれて物陰に連れ込まれる。

振り向くと、そこには愛しい

とても愛しい

彼がいた。
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