天使と悪魔の子
「へぇ、お前結構美人だな。
その一年よりもよっぽどいい…俺の女にならねぇか??」
大沢先輩はそう言って私の腰に手を回してきた。
なるほどね、根っからの面食いでこの子を恋人にでもしようと思ったのか。
そして彼女はおそらく大沢先輩をふった。
先輩はそれに苛立ち彼女に強く当たろうとしたということだろう。
この子は確かに可愛い。
けど、顔だけが目当てなら人として最低だ。
人の中身を見ようともしないで自分の力で相手をひれ伏せる。
『あんたなんか、お断りよ。』
自分でも、こんなことを口走るなんて思わなかった。
先輩の顔がだんだんと赤くなるのを感じる。
「てめぇ…」
やっぱり、煽るのは良くなかったか…
『殴るなら、この子解放してあげてよ。
他の人に見られたら、先輩、惨めな人って認識されますよ。』
「…ちっ、おい一年!さっさと失せろ!」
「ひっ」
一年生の子は私を何度もかえりみて走っていく。
これでいいんだ。
私なら、殴られるのは慣れてるから。
ーゴッ
突如、お腹に鋭い痛みが走った。
体が何メートルか吹っ飛んだ気がする。
地面に転がりこんでお腹を抱えた。
拳の重さが、父よりも格段に重い。
こんなの、息ができない。
「大人しく言う事聞けばこんなことにならなかったのによ!!」
お腹を更に何発か蹴られる。
彼の取り巻きはケタケタと笑って見下ろしていた。
「まぁ、顔はやめといてやるよっ。」
再び彼が拳をあげる。
もう無理だと、目を細めた。