天使と悪魔の子
ーガシッ

「なに、やってるんですか?」

「誰だてめぇ!!邪魔すんじゃねぇぞ!!」

いきなりの出来事だった。

目を見開く力もなく視線だけを動かす。

「かっこ悪いですね。」

宙の広い背中が私を庇う。

こちらを一瞬見て眉間を険しくさせた。

相変わらず、憎たらしいくらい真っ直ぐな目をしている。

「なんだと?」

これでもかというほど顔を赤くしている大沢先輩はもう一方の拳を振り上げた。

危ないっ

叫びたくても、声が出ない。

まぶたが重い。

「遅いですよ。」

そんな心配も知らずか、その手を掴んで流した。

私の目じゃ確認出来ないほど先輩の拳は重くて早いのに、宙はものともしなかった。

「失せろ。」

低く唸る様な声が、宙から聞こえて思わず体が反応する。

それからのことは覚えていない。

ただ、彼の目が血のように赤かったのは何時までも忘れない。
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