天使と悪魔の子
彼らとはもちろん夕紀、レリアス、ミリーナさん、ルリ、シェリーの五人のことだ。
ミリーナさんに逃がされた日以来、私はずっと彼らに会いたかった。
『みんな……!』
「待って、アリシア…よく見て。」
エルに止められてはっとした。
彼らに付けられた幾多もの傷と身を拘束する鎖。
私はキッとロンドとEGを睨んだ。
魔界の監獄の主であり拷問係である彼らが、夕紀達にした行為を想像するだけで頭が痛くなる。
「そうそうっ!!!その表情だよっ
人質ってこともあるけど、君の仲間を殺さなかったのは君のその目を見たかったからなんだっ。」
EGはエリーゼと似たような表情を浮かべて満足そうに微笑んだ。
『夕紀達を返してもらうわ。』
私は銃を固く握って構えた。
「もし少しでも抵抗すれば奴らの首は飛ばす。」
『っ、ミリーナさんとレリアスは兄弟なのに』
「知ったことか、
戦闘に正当性は必要ないだろう?」
私が戦闘態勢を整えると、目の前に大きな天使の羽が立ち塞がる。
それはマーシュを除く四大天使のフレンチさん、エリーゼ、アスタロッサさん達であった。
「エリーもっと歯応えのあるやつとやりたいなぁ。」
「何故リーフ様がいらっしゃるのかは知りませんが、味方なのでしたら心強い、この場は私達に任せてください。」
「先程はやられたが、今回は倒す。」
アスタロッサさんの頭には相当深い傷ができたのか包帯が巻き付けてある。
それでも尚大剣を手に戦闘へ挑む姿は、とても勇ましく頼もしいものだった。
『ありがとうございます!!』
正直エルやルーがいても、今の私には彼らの力を最大限に活かすことができない。
『ルーはここに残ってサポートを、エルは私と一緒に来て!』
「「了解」」
私はふかふかのエルの背中に乗ると魔法の言葉を口にする。
『“私達は透明”』
姿を消した瞬間、エルは夕紀達の元へ空を駆ける。
悪魔で見かけだけ
だから上に乗っている私が奇襲がないか気を張った。
そして
ーカキンッ
エルは夕紀達を拘束している者達に一気に噛み付いた。
『夕紀っっー!!!』
「美影……!?!」
私は彼に絡みついた頑丈な鎖に手を掛ける。
『“解”』
驚く程、すんなりと外れた鎖
レリアス達の鎖も同様にエルが外してくれる。
ふらりと夕紀の肩が揺れて、慌てて彼の腕を肩へ回した。
空に浮いているだけでも精一杯なのだろう、近くで見ると一際痛々しい生傷を見るとどうしようもなく心苦しい。
「美影様……ご無事で何よりです」
シェリーは少し濁った薄桃色の目を細めた。
ルリの方は意識がないのかエルの背中に乗っかりそのまま動かない。
『何言って……シェリー…ありがとう』
手がいっぱいで抱き寄せることが出来ないが、目を見てハッキリと言う。
ごめんね
泣いたら駄目だと必死で涙を止めた。
「美影……?」
『レリアスっ』
「夢か…?」
『夢じゃないよっ』
「美影ちゃん…」
ミリーナさんが泣きそうな顔で私を見る。
『っ…ミリーナさんは、私のヒーローです。』
一瞬驚いた表情をしたあと、彼女はどんな思いからかはわからないが涙を流した。
そして、突然それは恐怖の表情になる。
「後ろっ!!」
彼女の悲鳴のような叫びにならない声が聞こえた。