天使と悪魔の子

ーコトン

微かな物音に重い瞼をこじ開ける。

「先輩っ」

聞き覚えのある高い声だ。

「逢沢!!」

今度は力強い男の子の声。

『東洞、くん?……ここ、…っ!!!』

意識がはっきりしてくると、お腹の痛みが襲ってくる。

さっき私、先輩に殴られて…。

「この子が、逢沢のこと教えてくれて…
駆けつけようとしたら一条が逢沢を抱えて歩いてきたんだ。」

東洞くんは苦しそうに私を見た。

なんでそんな顔をしているのか、
私にはわからない。

『どうして、東洞くんが苦しそうなの?』

「どうしてって、決まってるじゃん。
悲しいからだよっ。
クラスメイトがこんな目にあって、俺、悔しいんだ。」

よく、わからないな。

「先輩っ、私の為に、ごめんなさい!」

『……違うよ、自分の為だから。』

「え?」

『なんでもない。
あの、宙は?』

「一条なら、
逢沢のカバンを取りに行ったよ。」

『そっか、ありがとう。』

ゆっくり簡易ベッドから足を下ろすと立ち上がる。

『ごめん、心配かけたみたいで。』

痛むお腹を抑えながら保健室の扉を目指した。
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