天使と悪魔の子
私は物陰で自分に治療魔法を使ってみた。
でもそれではやっぱり、中に蓄積された疲労と心の傷は癒えなかった。
『だめ…か』
私はダメもとで天界で癒しを司るマーシュのところへ行くことにした。
「マーシュ」
「アリシア様?酷いくまですっ
どうしたんですか?」
筋肉質な割に華奢で、女顔負けの可愛らしい瞳を揺らす彼はやはり男に見えない。
『少し眠れなくて…マーシュならなんとか出来るかなって思ったんだけど……原因が心の傷だから、無理だよね…』
「うーん…それなら強制的に眠らせるなんてどうでしょう?」
『強制的に…?』
そんな物騒な話をしていると、突然明るく陽気な声が聞こえてきた。
「やめときなー」
ふわふわと空中に浮いている彼女は少し身体に傷を作っていて、相変わらずつまらなさそうにこちらへ来た。
そしてその隣にはいつもとは違い副官らしき赤髪をポニーテールした男性がいる。
『エリーゼ、どうしたの?』
「エリー達の部隊はいつも特攻部隊って呼ばれているけど、一応治安も守らなきゃなんだー。
まぁ殆どアスタロッサが表でやってて、
エリー達は裏の捜査をしてる。エリー達っていうか、こいつにやらせてるんだけどね。」
エリーゼは彼のほっぺをつーんと押す。
「そして最後の美味しいところは貴女が持っていくんですよね……」
ため息を吐いて、男性は跪いた。
「緋の神殿の炎の部隊副隊長のシュファルツと申します。お目にかかれて光栄です。」
『貴方の活躍はきいています。顔を上げてください。』
目の下にあるほくろがなんともいえない色気を醸している。
20代半ばくらいの聡明そうな、
色気のある男性だ。
「で、本題に戻るんだけど…」
エリーゼは嘘っぽい笑顔をつくったまま、首を傾けた。
「あんた、誰?」