天使と悪魔の子
「あの時私が叱ったのがいけなかったのか…?
一体どこに……」
「隊長は悪くないですよ。それに姫さんはそこまでやわじゃない」
そんな会話が遠くからきこえてきた。
そこまで翼を大きく広げて飛んでいくと、やっぱりフレンチとエリック、そして他の隊員が集まっていた。
そして、俺の師匠であったリーフ(※今はルー)と美影の使い魔だったエル様。
「……宙?」
フレンチさんはもちろん、全員が目を点にして俺を見て、その直後顔を暗くした。
そりゃおかしいだろうね
魔界へ行った死んだかもしれない俺が美影の代わりに現れるなんて…
そして、俺は全員の前に降り立ちすぐさまに跪いて深く頭を下げた。
「美影は、ここにはいません。
俺の責任です。」
「いや……どういう」
フレンチさんは混乱しているのかエリックの服の袖を掴んだ。
「その事はボクが説明します。
宙さんのせいじゃない……いろんなことが重なって起きた結果なんです。」
筋肉のついた小柄なマーシュさんの大きな背中が俺をみんなの視線から阻む。
「ボクは……」
彼はこれまでの経緯を全て話した。
話し終わった後に俺はわからないけど、マーシュさんを責める人は誰もいない。
エリーゼさんも大人しく話を聞いているみたいだ。
ひとつひとつの言葉遣い、持ち前の柔らかい声色、なによりその人徳が説得力を持っている。
これが四大天使の“頭脳”と言われる所以か?
「お前……!」
静まり返ったその場に冷ややかで静かに怒りを湛えた声が通った。
エル様の月白色の瞳に睨まれると身体が強ばり、凄まじい殺気が襲う。
もしこれが普通の人なら、この殺気だけで死んでしまうかもしれない。
ぐっと襟を掴まれて引っ張られた。
大きく見開かれた目
その瞳には怒りのみが存在している。
「なにをしたのかわかってる?」
「はい」
「お前じゃなければ直ぐに消したのに」
神の次に崇拝され、畏れられている彼の覇気に、誰も動けなかった。
俺はその圧に負けないように見返す。
「取り戻すって……約束したんです。」
彼女と出逢ってからもう10年くらい経つ。
それ以来、俺は彼女を如何にして守るか、そのことをずっと考えて実行してきた。
「こんな所で……諦められねぇよ」
彼女に魅せられてからずっと
これから先も
たとえ彼女が他の男のものになろうとも…
最期の最期まで、守るって誓ったから。