天使と悪魔の子
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「あそこのパフェ美味しそ〜」
「見た目も可愛くない?写真撮ろー」
帰ってきた
流行も機械も正直難しくて
誰もが忙しくしている世界
いくつもの長い横断歩道を渡って
だんだんと比較的静かな町と向かう。
空を飛べば一瞬だったけど、美影と行った場所を見返したりするのに夢中でもったいなかった。
ここで俺がすべきことは
もうひとりの自分と“けじめ”をつけること
口先ばっかでなんにも考えが浮かんでいない俺だけど、できることはしなきゃいけない。
魔王が美影の力を手に入れた今
何を起こすかわからない
時間も限られている
けど、美影の本当の力は俺が昔に“封じた”。
もしもの時のため
それがいつまでもつかはわからないけど少しの時間は稼げる。
「少し時間を潰しといて欲しい。
ちょっと行きたいところがあるんだ。」
夕紀は何も言わずに頷くと、手を振って歩いて行った。
その影を見送って目的地に少し足早に向かう。
「あっ」
目的地には見た事のある女の子が立っていた。
その女の子は俺の姿を見て気まずそうに視線を逸らす。
「朔間…理江さん?」
「え、えぇっと……はい」
「どうしたの?…美影に用事?」
「用事ってわけじゃないんですけど…
先輩…いや、美影の彼氏さんですよね?」
彼女は前とは打って変わって清楚で爽やかな女性になっていた。
朔間理江
この前美影と一悶着あった美影のバイト先の後輩だ。
二人は仲直りしたんだっけ。
じゃあ彼女も美影の影響で変えられたのか…
「ううん彼氏じゃないよ。ごめんね、美影は今ここには帰って来れないんだ。」
「そうなんですか…
まさか、怪我とかじゃないですよね?」
「怪我ではないよ」
怪我より、もっと酷い
「そっか、最近連絡しようとしてもできなくて心配してたんです。
じゃあまた出直しますね!」
「うん、気をつけてね」
「はい!」
颯爽と黒髪を揺らす彼女を見送って目的地であった美影の家を見上げた。
自分でもどうしてここに来たのかわからない。
そしてまた踵を返して俺の家へ向かった。