天使と悪魔の子


また時は流れた。


そろそろ夏が終わる。


終わったら……俺はまた、俺ではない誰かを演じなければならない。


『ねぇアルベール!!!見て!!』


顔を上げた瞬間突風が起こって彼女の髪を攫った。きらきらと光って、まるで星のようだった。


振り返り微笑む笑顔を見て、泣きそうになった。


いや、泣いていた。


「無理だよ…」


『アルベール…?泣いてるの?』


アリシアは前に立つと下から覗き込んでくる。


『貴方の赤い瞳は夕焼けの色、青い瞳は晴れの色……アルベールは空にとっても似てる。曇り空の時はよくわからない……今雨が降っているなら、大丈夫だよ。いつかは絶対に晴れるからね。』


凄く変な例え話、それにまた涙ぐんでしまったのは俺だけの秘密。


無理だよ


君を好きにさせるどころか、俺が君のこと好きになってしまっていたんだから…。


綺麗な心を持っている人の瞳に移ることが、こんなに惨めな事だったなんて知らなかった。


俺が空なら、君をいつまでも照らしたい。


魔王から彼女を守るんだ。


自分の恋心に気付いたその日


“宙”が生まれた。



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