天使と悪魔の子
ーキーンコーンカーンコーン
「じゃあ行くか!」
東洞くんがお弁当も持ち上げて私達に笑いかける。
「んー日和はもう行ったみたいだな。」
日和さん…
今まで東洞くんと宙以外まともにクラスメイトの顔を見たことがない。
教室を出て少し緊張しているのがわかった。
日和さんてどんなひとだろう。
荒川くんもいいひとならいいな。
『あれ、宙お弁当は?』
ふと隣を見ると身軽そうにしている彼がいて、不思議に首を傾けた。
「あー、まぁ食べなくてもいいかなって。」
『駄目だよ、成長期の高校生が…。』
「んん……あ!じゃあ美影が作ってよ。」
『!?』
何を言い出すんだこの男は…。
そこで東洞くんは楽しそうに頷いた。
「ふたりって付き合ってたりするの?」
『な、ないっ!!』
私は慌てて否定した。
こんな綺麗な宙に私なんて不釣り合いだ。
「ふーん?
俺のことは東洞くんなのに宙は呼び捨てじゃん。東洞くんとか堅苦しいから架って呼んでくれよなっ。」
『か、架』
「よし!」
少し照れくさいけど嬉しい。
今まで忘れていた感情が蘇ってくるみたい。
「あ!逢沢ちゃんと一条くんだ!」
階段に座っている男女のうち女の子の方がにこやかに手を振ってくれる。
きっと彼女が同じクラスの木之本日和さん。
こんな人懐っこい子、クラスに居たっけ…。
内側がピンクに染められた金髪に少し日焼けした化粧臭くない可愛らしい顔。
ショートの髪が彼女の元気さを際立たせている。
その隣には不思議な雰囲気の男の子。
黒髪に紫色の目をしている、宙と似て凄く綺麗な目…。
宙も美形だけど彼もなかなかに美形だ。
あ…
そう言えばいつも女の子たちが騒いでいたな。
“隣のクラスの荒川夕紀くんめちゃかっこよくない!?”
“去年のミスターコン優勝してたもんね!”
“3組の山川さんも狙ってるらしいよー”
あぁー…
蘇る記憶を振り切って挨拶をする。
『あの、お昼一緒に食べさせてもらっていいかな?』
「もちろん!逢沢さんと話して見たかったんだー!あ、私のことは日和って呼んでね!
こいつのことは夕紀って呼んだげて!」
『よ、よろしくね。』
夕紀くんは少しこちらに視線を向けたがまたパンを食べ始めた。
「あー!もう!こいつ凄い無愛想なんだー
だから気にしなくていいよー。」
日和は笑い飛ばして私達に座るように促した。