天使と悪魔の子

「あ、その卵焼き超うまそう!」

架が食い付き気味に言うので恐る恐る差し出した。

「うっま!なにこれ、逢沢がつくったの?」

嬉しくて何度も頷くと宙が食べたそうに目配せしてくる。

『ふふっ』

思わず笑うと皆が静かになった。

『…?』

「美影ちゃんは笑ってる方がいいね。」

日和が嬉しそうに目を細めた。

『あ、えと、うん、ありがとう…。』

顔が熱くなって俯いた。

なんだろうこの気持ち、
凄く胸が暖かい。

「なにあんた可愛いー!!!」

下の段から勢いよく抱きついてきて驚いた。

か、可愛い

今までそんなことを言われたことがなかった。

不思議な気分で抱きついてくる日和を見つめる。

『あ、お、お弁当髪についちゃう。』

「うわー!ごめん!私の家可愛い双子の弟と妹がいるんだよねーなんか美影ちゃん見てると姉心が疼くんだよー。」

姉弟がいるんだ

私に兄弟がいたらどうだったろうな…。

「どうかした?」

暗い顔をしていたのだろうか、笑顔を繕った。

『ううん、あの…宙、さっきのお弁当の話なんだけど…』

「え…もしかして作ってくれるの?」

『私の作ったのでいいんだったらだけど…』

「凄く嬉しいよ。ありがとう。」

宙は綺麗な瞳を輝かせた。

やっぱり、私はこの瞳が苦手だ。

「ふふふー、架~私も作ってやろうか!」

日和がにやにやと架に問いかける。

「俺を殺す気かよ…」

「なによ!失礼ね!私だって料理くらい出来るわよ!」

「前…カレーに栄養薬入れてた。」

夕紀くんのその言葉にみんなが笑った。

楽しい…こんなに楽しい食事はいつぶりだろう。

溢れそうになる涙を堪えてご飯を口に詰めた。
< 29 / 262 >

この作品をシェア

pagetop