天使と悪魔の子
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『私はこれで失礼します。』
時刻は二十二時
バイトを終えるのはいつもこの時間だ。
高校生は夜の時間に制限がかかるから辛い。
「おつかれーっ」
光希先輩はあと二時間あるらしく急いで夕食を喉に詰めていた。
私は適当に廃棄商品を頂戴してカバンに入れる。
外に出ると綺麗な月が輝いていた。
ーブォンブォン
大量のバイクの音が冬の冷たい空気を揺らす。
公園には人だかりができていてほとんどの人が髪を染めていた。
普段は暴走族に会うことはあまりないんだけどな…。
今から遠回りするのも不自然だし、
私の学校には族の人もいるから顔を見られるのは面倒臭い。
キラキラと激しく主張するライトを背にゆっくりとその場を去ろうとした。
ーガシッ
「なぁ、待てよ」
『…』
「おいてめぇ知らばっくれてんじゃねぇぞ」
低く轟くような声
何時もより早く脈打つ心臓
この感覚には覚えがある
「こっち来いよ」
ガッチリと掴まれた手はヒリヒリと痛い
昨日に続きこの状態でまたお腹を殴られでもすればきっと正気じゃいられなくなる。
この感情は間違いない
恐怖
『や、めて』
「あ?」
『離して、ください…』
ずるずると引きずられるように公園に入った。
その瞬間、視界が歪む。
あったはずのバイクの群れはなく異型のものが無数に存在していた。
宙とは全く違う
禍々しいもの達
『い、いや』
私の腕を掴む手も紫色の刃物のような腕に変わっていた。
公園の筈なのに、何故か空間がグラグラと歪んでいる。
「お前、幻術を解いたのか…?」
幻術ってなに?
私は何もしてない
そんなことよりここを一刻でも早く逃げなくてはいけない。
「クックックッギャッギャッギャッ」
突然奇声を発する異型の生き物。
同時に周りにいた生き物も笑い始めた。
きっとこれは悪い夢
悪夢に違いない