天使と悪魔の子

「お前、気付いてないのか?」

ガラガラと嬉しそうな声色で話す彼等。

これは、頷いてもいいのか、それとも…。

「図星だなぁ」

そんなことを考えている暇もなく、
ザヘル達の口が耳元まで裂けた。

「お前、連れて帰る。」

『やだ、やだやだやだ!!』

必死で暴れるもビクともしない。

このまま、私、殺されちゃうの?

あぁ、まぁこんなものだったのかな、私の人生。

ザヘルが水溜りの前で止まった。

一瞬、目が赤くなると水面がゆらりと揺れる。

「大人しいな」

水面

水面…

鏡がこの空間を出る鍵

『あー、おかしいや』

「!?」

いつ死んでもいいと、昨日までは思っていたのに…。

公園の入口にある水溜り、あそこから私はこの不思議な空間に入ってしまった。

じゃあもう一度、あそこに姿を映すか入りさえすれば…。

現実では有り得ないことがこの世界では起きてしまう。

不思議な力が湧いてザヘルの手を振り切った。

逃げろ逃げろ逃げろ

動け動け動け

死に物狂いで足を動かした。

あと、少し

水溜りに姿を映す。

案の定、そこは元の世界に繋がっていて、水溜りの中にポツリと一人立っていた。

こんなことをしているとさっきのことが夢のように感じる。

だけど、さっきのは現実。

手に残る痣がそれを物語っていた。

だめだ

ここに居てはまた奴らが来てしまう。

急いでその場を後にしようとしたその瞬間

『いっ!!!』

水溜りの中から紫色の腕が出てきて足首を掴まれた。

静か過ぎる夜

小さな悲鳴が空を掻いた。

必死で地面にしがみつくと爪の間に砂が入り込む。

でも、それでも、

『なんで!!!』

なんで、なんで?

『生きたいって思うの!!!!』

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