天使と悪魔の子

『……帰ろう』

道端に転がったカバンを肩にかけて制服のスカートの砂を払った。

なんだろうこの感じは、考えようと思っても何も思い浮かばない。

只只無の感情に犯されながら手袋のしていない手を見つめた。

ドロドロで草を掴んだのか少し切り傷の付いた手。

『“生きたい”って思ったのは宙のせいなんだよ…。』

ふらふらとした足取りで夜道を行く。

ーガチャ

二階建ておんぼろアパートの上の一室

ここが私の家

『ただいま…』

畳は剥がしてフローリングに改良した
そこそこ綺麗にしてある家

生活感の欠けらも無い最低限の家具

靴を揃える気力も無くそのままソファーへ崩れこんだ。

机の上の救急箱を開けて絆創膏を手にした。

『…シャワー浴びなきゃ』

お腹にまいた包帯を取り制服を脱ぎ捨てて鏡に映る自分を見た。

『う、そ』

真っ白な綺麗な肌

朝まではあんなに大きな痣が出来ていたのに…。

確かに、あの悪魔から逃げる時痛くはなかった。

汚れた手を見るとさっきまで出来ていた切り傷が見当たらない。

『わ、私疲れてるんだ…』

“お前は、魔女だな!!!!!!!”

ーキンッ

頭に鈍く響く痛み

鏡に映る自分をもう一度見た。

『っ!』

目が…金色…

怖くなってお風呂場に駆け込んだ。

今までの汚れを落とすように必死で拭う。

『汚い汚い汚い』

大丈夫安心して、落ち着け。

“アイツ”はもういないんだ。
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