天使と悪魔の子
お店を出る時にはもう既に日は暮れていて、
日和は眠そうに欠伸をした。
「この子猫すげぇ綺麗だよな。」
ーミャア
ゲージの中でコロンと寝転がって機嫌が良さそうにしている。
架が言った通りとても綺麗な猫だ。
「名前何にするの?」
宙が興味深そうに首を傾げた。
名前、名前…
そっと猫をベンチに置いて見つめた。
真っ白な毛に月白色の飲み込まれるような妖艶な目。
『lumiere…』
「え、今なんて言ったの?」
日和が食いつき気味に聞いてきた。
『ううん…この子の名前はエル。』
「エル?」
夕紀くんも不思議そうに首を傾げる。
『光…外国の言葉から取ったの。』
「ふーん…」
フランス語
私はこの言語に長けている。
その理由は誰にも秘密。
「流石に夜は冷えるな…猫も暖かくした方がいいし、そろそろ解散にしよう。」
「そうだね。」
夕紀くんも宙も寒さを感じないはずなのに…二人共気を遣ってくれてるんだ。
ちらりと夕紀くんを見るとバッチリと目が合った。
「…」
少し睨まれたような気がしたけど、私もいきなり昨日言われたことを信用するわけが無い。
目を逸らしてゲージを持ち上げた。
「じゃあな!!」
架と日和、夕紀くんは駅の方に向かうらしく三人並んでわいわいと話している。
私はというと地元民の為そのまま住宅街に向かう。
「あ、美影、一緒に帰ろう。」
『うん』
宙はどこに住んでいるんだろう。
天界?魔界?
違う、追い出されたと言ってた。
否
それ以前に聞かなきゃいけないことがあるんだ。
それに背を向けるのはいけない。
ねぇ
宙
貴方は私を…
「どうしたの?」
『…ううん』
聞けっこない
宙は私を殺すのかなんて…
「金曜日、学校で会おうって言ったのに、日曜日に出くわしちゃったね。少し恥ずかしいな。」
『そうだね』
「…バイト先の光希さんと仲良いの?」
『そういうの、あんまり考えたことなかった。』
宙が転校してきたのもつい最近
それから私の生活は一気に変わった。
いつもポーカーフェイスで周りと関係を持つのを避けていた。
『光希先輩は凄く、優しい人だよ。
宙はいなかったけど、私達が一年生の時に三年生だった城西出身の先輩なんだ。
今は都内の大学で…』
「光希先輩のこと、 信頼してるんだね。」
少し声が低くなった気がした。
気になって彼の顔を覗くと両目が血色に染まっている。
それに感情は見えなくて、何時もの輝きもなく一瞬寒気がした。
『っ…』
「あ、ごめん…夜になったり感情的になると赤くなるんだ。何時もは制御しているんだけどね…。」
『違う…』
目の色が変わったことじゃない
何の感情も読み取れない
その目を私を見たことがあったから
だから怖かった。
あの目は……
まるで過去の私の様だった。