天使と悪魔の子

家までとは行かずとも近くの曲がり角で止まる。

『ここでいいよ。』

「じゃあ、今度こそ学校で。」

『学校で。』

彼に背を向けて歩き出す。

しかし彼は一向に動く気配がない。

思わず振り返って確認した。

『帰らないの?』

「帰るよ」

『何処に?』

はっと口を抑えた

これは聞いていいこと?

彼にとってはダメなことかもしれない。

『あ、じゃあ帰るね。』

「気になるならまた冬休みに家においでよ。RIMEで話してくれたらいつでも歓迎する。」

『…うん』

いいの…?

こうやって他人に臆病になるのが嫌になる

放って置いてくれればいいのに…

ーミィ

エルの鳴き声で正気を取り戻して宙に今度こそ別れを言う。

『じゃあ』

「うん、じゃあね」

少し早足にアパートまで急ぐ。

ーガチャ

『はぁ……』

人といるのは楽しい、

けど同時に疲労感が襲う。

何かを得ると同時に何かを失うことは必然なのか…

ーミャア



エルを外に出さなきゃ

『閉じ込めてごめんね』

開けてあげるとダッと走ってソファーに寝転がった。

暖かいようにストーブを入れ、コートを脱ぐと地面にある危ないものを退ける。

『これでいい…?』

エルに聞いてもわからないか…

慣れない環境に慌てるのはエルの筈なのにこちらの方がドギマギしてしまう。

取り敢えずシャワーを浴びようと洗面所へ急いだ。

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