天使と悪魔の子

その日の夕刻、別れまで後十分くらいだろうか。


「そろそろかなぁ。」


『嫌だ、まだもっと居たい!』


「お母さん、また来るからね。
いつでも会えるよ。」


『本当?ほんとに本当?
じゃあ明日は!?明日が無理だったら、来週会おうよ!!』


「うんうん、じゃあ明日会おうか!」


『やったぁ!!』


幸せな時間だった。


私は本当に、明日彼女に会えると信じ込んでいた。


最初で最後の、母との時間だったのに。


『なんで、来ないの?』


私はそれ以来、性格が変わった。


クラスの中でもよく発言していた私は、急に大人しくなった。


自分でもわからなかった。


『私、むかしどうしてたんだっけ。』


異常に人の心を気にしてしまう。


こうしたら嫌だろうな。


あんなことされたら悲しいだろうな。


相手の心を気にし過ぎて、仲良くすることが怖くなった。


また、母みたいに消えていっちゃう。


父みたいに見放されちゃう。


そんな恐怖心のせいか、親友と呼べる人も作れなくなった。

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