天使と悪魔の子

制服が冷えて本格的に寒い。

身体を震わせながらも資料室に駆け込む。

『宙っ!』

扉を解放するもそこには彼の姿は見えない。

どこにいるの?

彼がいつも行く場所なんて知らない。

家も知らない。

途方に暮れてゆっくりと資料室から出た。

「おい!」

『…』

「おい、聞いてんのか?」

肩を掴まれてはっとした。

振り返るとそこには大沢先輩がいて気まずそうにしている。

「…さっきは助かった。それに、前は悪かったな、その、殴ったりして…。」

大沢先輩が謝るなんて意外だった。

返事できずにいると痺れを切らしたのか話し始める。

「アイツ探してんだろ?身長高ぇ目が青い奴。」

『見たんですか?』

「あの後気になって戻ってきたら資料室の窓が開いてたんだ。ここ二階だしそっから降りてどっかに行ったんじゃねぇか?」

窓から外へ…?

私は大沢先輩が話しているのを無視して窓枠へと足を掛けた。

「お、おい!危ねぇぞ!」

『私、丈夫なんで。』

そう言って笑いかけ空を飛んだ。

除草をサボっていたのかいいクッションになって綺麗に着地する。

宙は、空にも飛べる。

どうしようもないが、じっとしてられない。

湿った地面を蹴って走り出した。
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