天使と悪魔の子
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ーピンポーン
私は今日、日和の家にやって来た。
そう…
今日はクリスマスパーティーの日だ。
トートバッグには夕紀くんへのプレゼント。
そして両手にはお菓子をぶらさげながら。
一つだけ引っかかっていることは、
終業式以降、宙とは出会わなかったこと。
「おー!来たねー!」
『ひ、ひさしぶり』
「みんなもう来てるよ!
ちゃっちゃと始めよう!」
『お、じゃまします…』
部屋に入ると途端にドタドタと地鳴りのような音が聞こえてくる。
その正体はすぐに姿を現した。
「おねえええええええ!!!」
「ひよりいいいいいいっ」
勢いよく体当りされた日和は慣れているのか軽く妹を抱き上げた。
噂の双子の兄妹だ。
目元が日和そっくり。
「こらこら、今日はおねえの友だち来てるから大人しくしてね。」
「うん!架兄ちゃんいるしな!!」
「紹介するね、こっちの髪の毛ふわふわなのが妹の伊織(イオリ)で、このやんちゃ野郎が弟の侑李(ユウリ)だよ。」
ふたりとも栗色の髪ですごく可愛い。
もしかすると日和の元の髪色は栗色なのかな?
ーガチャ
「おー!来たか来たか!」
中に入ると宙もいてこれで全員集合だ。
私がどこへ座ろうか悩んでいると架が手招きをしてくれる。
「おぉ、大漁だなー」
「じじくさ」
「うっせ」
お菓子の山を見て目を輝かせる双子がとても可愛らしい。
いいなぁ
心の中でふと漏れた。
こんな幸せな家庭に普通に産まれて育っていく。
愛が当然のように…。
そう思うと、少し妬ましい。
まぁ今更の話なんだけど。
「じゃあ乾杯な!」
「オレンジジュースだけどね。」
ーカンッ
「「「「『乾杯』」」」」
過去は取り戻せないけど、今がある。
パーティーなんて…したことがなかった。
「じゃあ超早速なんだけどプレゼント交換でもしましょうか!宙からねー!」
宙は少し慌てたあと鞄に手を伸ばした。
「俺は、架に。」
するとなにやら兎のぬいぐるみのようなものを取り出して放った。
「ぷっ、兎の人形?良かったじゃん」
「……」
架は何も言えないようで兎とにらめっこしていた。
「冗談、後にファスナーがあるからそこ開けてみてよ。」
宙が楽しそうに笑った。
この前のことが嘘みたいだ。
架が背中のファスナーを開けると目を輝かせた。
「これ!俺が前欲しいって思ってたイヤーカフじゃん!!」
「この前お店行った時物欲しそうに見てたからね。」
なるほど、架は顔に出るからなー。
「うさぎさんかわいい」
伊織ちゃんがうさぎの人形に目をやると架は宙にアイコンタクトをする。
「んじゃ、これあげるよ。」
「いいのぉ?」
「大切にしてやれよ!」
「ありがとう架にぃ」
日和が可愛がる気持ちがわかるよ。
本当に可愛い。
「じゃあ次は俺だな!」
架は待ってましたと言わんばかりに可愛らしい小包を背中から出す。
「日和」
「あ、私!?ありがとう!見ていい?」
「あぁ」
日和は袋を開けた瞬間嬉しそうにバタつく。
双子も気になったのかピッタリとくっついた。
「ほんとありがと!」
「何貰ったの?」
宙が聞くと、日和はふたつの物を取り出す。
タオルと可愛くてお洒落な赤いスポーツウォッチ。
そういえば日和はバスケ部なんだったっけ。
運動があまりできない私にとっては夢のまた夢の話。
その前に部活なんか入ったらお金が吹っ飛ぶ。
少し寒気がしてお菓子を口に突っ込んだ。
「私はー宙!」
日和が侑李の背中を押すと途端に宙に飛びついた。
「おわっ」
「これあげるー」
宙の首には青っぽいマフラー。
「宙って何考えてるかわからないし…とりあえず寒そうだからマフラーかな?なんて…。」
「あったかい…ありがとう。」
確かに宙はいつもマフラーも手袋もしていなくて寒そうだった。
宙って、天使か悪魔、どっちなんだろう。
ふとそんな疑問が浮かんだ。
どちらにもなりきれないと言っていたけど、天使と悪魔がいるように、必ず派閥というものが存在しているはずだ。