天使と悪魔の子
少しの後ろめたさを残してパーティは終わりを告げた。
外に出ると寒くて身体が震える。
「今日は来てくれてありがとね!」
「つか美影ゲーム初めてであの強さは才能あるんじゃね?」
そう、ゲーム機というものに初めて触れたのだがまさかの圧勝。
自分でも想像していなかった才能だ。
「…架が弱いんじゃねーの。」
「おい夕紀、なんつった?」
また始まりそうな痴話喧嘩(違う)に笑を零した。
『じゃあまたね。』
「美影、一緒に帰ろう。」
宙が気まずそうに俯きながら横に並んだ。
ふたりの歩く足音だけが響く。
『私ね、』
先に沈黙を破ったのは私だった。
『宙に甘えちゃったみたい。』
「…え?」
『実はね、前から知ってたんだ。宙が私を殺すこと…。』
彼の足が止まった。
もう逃げちゃダメだ。
正面から彼を見据えて目を決して逸らさないようにする。
『いいよ、私の命、貴方にあげる。』
「…っ」
『貴方に殺されるなら、だけどね。』
これが私の決意だ。
重いとかそういう問題じゃない。
本物の愛や恋にそんなものあるのだろうか。
私達は思うに異常だ。
時々行き過ぎてしまう。
それはきっと彼も同じ。
軽いとか重いとかいう人がいるけど、一生懸命やっていたらそんなことどうでもよくなる。
「なんで…」
『クスッ、私は宙に生かされてるから。』
夕紀くんと同じことを聞くんだな。
と思って少し笑ってしまった。
それに混乱しているのか複雑な表情をしている。
「俺が美影を殺すって言うのは……俺といると美影がいろんな災厄に巻き込まれるから。」
『なんでもいいよ、もう充分に不幸を味わったから。』
「…美影は、かっこいいや。」
宙はふと笑った。
今にも泣いてしまいそうな、弱々しい微笑みだった。
手を伸ばそうとした時、私はこれ以上にない恐怖を覚えた。
「……美影か?」
後ろから聞こえる重くのしかかるような声に冷や汗が止まらない。
宙もそんな私の様子を見て不審に思ったのか眉を寄せた。
「やっぱり、美影じゃないか。」
近寄ってくる足音に、振り返れずにいた。
どうして、今なの?
ようやく前を向こうとしたのに…どうして?