天使と悪魔の子
“久しぶり”
誰かの声がして目を開けた。
『貴方は……』
真っ白な世界
そこに浮かんでいる白の彼
彼に会うのは二度目か
一度目は教室で暴走してしまった時、夢の中で出会った。
これもまた夢なのだろう。
エルには近づかないでと言われたがこれは不可抗力だ。
『貴方は誰?』
“さぁ”
『さぁって…』
“この前会った君は、もっと孤独だったのに。”
どこかつまらなそうに話す彼。
ゆらゆらと空間を彷徨いピタリと止まって私の髪を掬った。
“自分の正体がわかったみたいだね。”
綺麗に整ったエルに似た顔。
でも少し違う。
目の色が薄い紫色で少し虚ろだ。
まるで世界の全てに絶望したかのような、昔の私の目。
“でもまだ、全部は思い出していないみたい。”
『……え?』
“彼のことを知りたくない?”
『彼のこと?』
“一条宙”
宙のことを、私は知らない。
私の記憶では彼の存在は今までない。
彼に会っていたとしても
『それは自分で直接彼から聞く。』
“無理だよ”
『どうしてそんなことを言われなきゃならないの。』
少しの苛立ちを感じて彼を睨んだ。
“彼は君のことを、大切に思っているからね。”
私のことを大切に……
でもそれで、話さないとは少し違うんじゃないか?
“知りたくなったらいつでも〝呼んで〟よ。”
『誰が…』
“君は絶対此処にまたくる。”
白い彼はそう言うと笑ってだんだん見えなくなっていく。
『ま、待って貴方は一体』
“じゃあね、なにもできないお姫様。”
彼が消えた瞬間、不思議な世界は消えた。