天使と悪魔の子

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『送ってくれてありがとう。』

服を着替え、時給の高い年始のバイトに励む。

「うん、じゃあ夕方また迎えに来るね。」

宙はさっきの宣言通り送り迎えをしてくれるらしい。

「逢沢ちゃん?」

『あ、光希先輩おはようございます。』

「…彼、逢沢ちゃんの一体何なの?」

もう姿の見えない宙に向かってなにか不安そうに言った。

『宙は…大切な人です。』

「え?」

『好きよりももっと強い、なにか…』

「愛…」

そうか、これは愛しているっていう感情。

「逢沢ちゃん」

名前を呼ばれ振り返る。

唇が触れ合った。

え……なに?

『んっ!?』

抵抗しても強い力で抱き締められているから離れられない。

『ぁ…や』

つい漏れる声に光希先輩は反応を見せる。

どうして?

どうしてこんな…

『いやっ』

思いっきり突き放すと、そこには呆然とした表情の光希先輩が立っていた。

『なんで…こんな』

「…逢沢ちゃんが好きだから。」

『え?』

「ずっと、気になっていたんだ。でもあいつと出逢ってから君はどんどん離れていく。」

再び近づこうとする先輩、それに足が竦んだ。

光希先輩はあくまで尊敬する人。

そんな対象とは全く見ていなかった。

「……なに、してるんですか?」

不意に聞こえた声に思わず身体が反応した。

理江ちゃん…

「君には関係ない」

光希先輩は負けじと反論した。

「兎に角、今のが俺の気持ち。」

光希先輩はそれだけ言うと店内へ入っていく。

理江ちゃんは死んだ目をしながら私を見ていた。

「あぁ…やっぱり先輩は邪魔者でした。」

『違う、私はそんなつもり』

「黙れ」

誰から聞こえたのかわからないほど低い声。

でもそれは明らかに理江ちゃんのもの。

「そういえば、今、誰か一緒に来ていませんでしたか?後ろ姿しか見えませんでしたけど、あれは絶対にイケメンですよね。」

やめて

「彼、誰ですか?」

『貴方には関係ない。』

私も彼女を無視して店に入った。

今日のバイトはなんだか荒れそうだ。
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