天使と悪魔の子
最悪だ
あれからずっと仕事中は会話なし。
もうなんと言っていいのかわからない疲労感。
げっそりとした私に公園で待たせていた宙は不思議そうに首を傾げていた。
「どうしてバイト先じゃないの?」
『……光希先輩が』
あっ
うっかりと口を滑らせるところだった。
彼にキスされたなんて、言ったら…軽い女だと思われてしまう。
「…光希先輩がどうかしたの?」
『ううん、それより、
今日の夕飯何にしようかな。』
嘘をつくのがだんだん下手になっている気がする。
魔女なら欺かなくてはならない。
「…来て」
宙はいつになく怒ったような感じで私の腕を引いた。
『ちょ、宙、痛い。』
掴まれた腕が痛くて、思わず声を上げる。
少し弛めてくれたものの、手を離されることはない。
ーガチャ
宙の家に入った瞬間彼は私を壁へ押し付けた。
「ねぇ、どうして」
『そ…ら』
私の唇に指を這わされ少し体が反応する。
「どうして、キスなんかしたの?」
『なんで知って』
「あの時、少し気になって戻ったんだ。
でも俺には、何も言う資格はないから…。」
宙は悔しそうに顔を歪める。
どうして、そんなことを言うの?
私の気持ちを知っているんでしょ。
でも貴方は、きっと今のままじゃ振り向いてくれない。
「美影、」
彼は私の首筋にキスをして熱い視線を絡ませてくる。
そして唇に触れる寸前、彼は正気を取り戻したのか私から離れた。
「ごめん」
玄関にひとり残された私は、どうすることもできず、ただ呆然と身体が熱くなる感覚に蝕まれた。
『どうして…』
今のキスがとても切なくて
どうしようもなく残酷な気がして
私はひとりで泣いた。