トラブルシューターの花嫁
三人で仲良くリビングへと行くと朝食を作っている母親と、いつもなら出勤しているはずの父親がいた。
三人が二階から降りて来たことに気づいた母親は声をかけた。
「おはよう、風太に雷太。花凛を起こしてくれてありがとうね」
「「うん!任務完了!」」
「花凛も、おはよう」
「おはよう。お母さん」
母親に挨拶をした後、何故まだ出勤していないのだろうかと不思議に思いながら自分の席に着くと、父親が何やら新聞を読みながら難しい表情をしていた。
今日は出勤時間が遅いのだろうか?又は仕事に関して何か悩み事でもあるのだろうか?もしくは新聞に載っている経済問題とか…と色々思った。
声をかけようにも聞いたところで学生が社会人の気持ちを理解するのは難しいと判断し、花凛はとりあえず「おはよう」と挨拶をして目の前にある朝食を食べだした。
ハムエッグと食パンと野菜スープ。
母親はいつもの様にニコニコした笑顔でいるけれど…母親もそれなりに違和感があり眉を寄せた。
戸惑い?…寂しさ?…悲しさ…?
無理して笑ってる??
風太と雷太は気づいていないのか、もしくは気付かないフリをしているのか、いつも通りに色々と喋りながら朝食を食べていた。
隠れる様に妙に感じるピーンと張り詰めた緊張感
昨日までは感じなかった…。
両親は、何かを隠している??
自分達の息子、娘に。
「ねぇ父さん、出勤時間大丈夫?遅刻しない?」
「そうそう!いつもなら、もう家を出てるよね」
疑問に感じていたのは花凛だけでなく風太も雷太もだった。
二人揃って頬にパンを頬張せながら喋る姿はまるで小学生の様だけど間違いなく風太と雷太は花凛の兄であり高校二年生。
花凛よりも身長は高い…けど学年クラスでは小さい方らしい。それがコンプレックスだと前に話していた。
「…そうだな」
父親は頷いた後、新聞紙を机の上に置いて、花凛のアーモンド色の瞳を逸らさすものかというぐらいにジーッと見つめた。
「今日は出勤時間をずらしたんだ。今日は大切な日であり、別れの日でもあるんだからな」