放課後、いつもの場所で。
「これって…」

「あげるから使いな。俺のお古だけど」


手のひらがじんわり温かくなる。

視線を手のひらに向けると、渡されたのはカイロだった。


「え、でも」

「いいから。それに女の子は早く帰りな。人が多いつっても変な奴が居ない訳じゃないから」


じゃあね。

と手をヒラヒラと振りながら来た道を戻ってく姿に、私はただ呆然と見てるだけしか出来なくて。

ただ温かいカイロをぎゅっと握りしめた。


「…………」


あ!クリーニング代!!

ハッと思い出した時には時すでに遅くて、
男の姿はもうない。


名前ぐらい…聞けば良かった、な…
< 4 / 19 >

この作品をシェア

pagetop