放課後、いつもの場所で。
『まもなく新学期の始業式が始まります。生徒のみなさんは、速やかに体育館に集合してください』


教室に入って暫くすると、校内放送が入った。

始業式かぁ。
校長先生の話長いんだよね。


「風香、行こー!」

「うん」


同じクラスのさやかと当たり前のように並んで廊下に出た。

さやかとは中学以来の友達で。
私にとって大切な友達の1人だ。


「さっむ」

「あ、これ貸してあげようか」


寒さに震えるさやかに、私はブラザーのポケットからカイロを出してさやかに渡した。

それを受け取ってさやかは顔に当てる。


「あったかーい!てか、風香がこんなの持つってどうしたの」


私は冬生まれだからか、寒さには昔から強い方だった。

だから今までカイロなんて持ったことがなくて、さやかが驚くのも頷ける。


「んー、ちょっとした心境の変化」

「?」


あの日、カイロを貰ったことが何気に嬉しくて。

未だにあの人のことを忘れたことはなかった。


あの人にとっては、

何でもないことだったんだろうけど………


それにどこの誰かもわからないまま、
恐らくもう会うことはない。


でもカイロはあの時のように心を温かくしてくれる。

だからあの日以来、私はカイロを持つようになっていた。



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