struck symphony
漸く、
アニマルマンプレートのある
ドーナツショップに着き、店内へと入った。


席に着くなり、
響は、テーブルに来た店員のお姉さんに
大きな声で「アニマルマンプレート!」と言い、
笑いを誘った。


注文を終えると お行儀良く待つ、響。


程なく 店内の軽快な音楽に気付き、
座ったまま
リズミカルに 楽しそうに踊りだした。


そんな愛娘の姿を 目を細めて見つめる、
恵倫子。

“さっきとは打って変わって…”


目の前の元気な愛娘に 「まっ、いっか」 と、
響が幸せなら なんでもいいや と、
恵倫子は、
そっと微笑んだ。




アニマルマンプレートとミックスプレートが
運ばれて来て、母娘の会食がはじまる。


美味しそうに食べる愛娘を見てるだけで
恵倫子は、幸せな気持ちになった。



心地良い空気感に、時間の経過も忘れる。




ーーー




時間は、経て …




ピアニスト香大陽音は、ラストの演奏を終えた。


観客は、スタンディングオベーションで
陽音に 拍手喝采を浴びせる。


そんな、
目映ゆいばかりの観客席を見渡しながら
陽音は、称賛を全身に受け、
観客席の 上手、下手、中 と、
それぞれの方向の御客様へ 感謝の一礼をした。


そして、

もう一度 観客席を見渡したところで、




“あっ…”


座席に
さっきの母娘の姿がないことに気付いた。


姿のない座席に 視線が止まり、
咄嗟に 陽音の表情が曇る。

が、
すぐ様、歓声を耳が取り戻し、
陽音は、再び スマートな微笑みで 観客席を眺めた。



ーー
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