struck symphony
壮大に… 奏でられ…



時間も忘れ… 聴き入り…



抑揚の世界観に…

観客たちは皆、別世界へと舞い込んだように

陽音の演奏に引き込まれていった…



陽音と共演者たちとの融合も 素晴らしく、

演奏から 心に響き… 感じられるものがあり

思わず 感動し、涙も出るほど…





絆も感じられ

相乗効果も感じられる その調べは…

言葉では言い表せないほど

素晴らしい演奏だった…






丁寧かつ、

激動に… 怒濤に… 繊細に…

優雅に… 静寂に…

響き… 奏でられてゆく…





そして、





雄大な旋律の その曲は、
感動を生み、しっかり聴こう堪えていた
観客たちの涙を、溢れさせた…




恵倫子も、一粒だけでは堪えきれず、涙する。




“こんな…特別な出来事と…
こんな感動は…………初めて……”






会場内は、素敵な涙で溢れた…





ーー





ラストの曲が終わると、
満場の観客たちは、
スタンディングオベーションで
ステージに向けて 拍手喝采を浴びせた。


陽音たちが、一礼し ステージから捌けると、
拍手喝采はアンコールへと変わり、
盛大に湧き起こった。



程無くして、陽音たちが 再び
ステージに上がると、
歓声と拍手が 巻き起こり、

観客席までも明るく照らす照明のなかで、
アンコールの演奏が、始まった。


それは、先程までとは全然違った奏で方で、
とても軽やかな旋律に 陽音も、共演者たちも
立って演奏し始める。

ノリノリに踊るように演奏する姿に、
観客たちも 堅苦しさから開放されて、
誰もが立ったまま リズムを取りながら聴いている。

会場全体が、
リズミカルに 愉しげな雰囲気に包まれた。







会場が一体となった 愉しいアンコールも終わり、
明るさで よく見える観客たちは、
とてもいい笑顔で 拍手喝采を送っている。


陽音は、喝采を噛みしめながら……


陽音たちの深い一礼のなか、
拍手喝采を真摯に受けとめるように、ゆっくりと
幕は下りた。


余韻嫋々に 陽音は、ステージから捌ける。



拍手と歓声は、
今までのコンサート以上に続き、鳴り止む気配はない…


そんな観客たちの様子に、
陽音は、今までとの違いを感じ、

“初めてのワールドツアー…
しかも今日は、ラストだからなんだな…”
と、

この 拍手の意味を感じ取り、

特別な日の貴重さと
拍手から伝わってくる 皆の想いに
陽音は、感謝の気持ちで いっぱいになった…



「なんだか… やられちゃうな… 涙が出る…」


陽音の呟きに、共演者たちも 頷く。




陽音は、観客たちからの想いを噛み締めるように
ゆっくりと立ち上がり、

鳴り止まぬ拍手と歓声を しっかりと聴きながら、
ステージに上がった。



カーテンコールに 幕が開く…



幕が開くと同時に 歓声は、一気に大きくなった。


陽音は、ゆっくりと 観客席を見渡す。

皆の 涙を拭う姿に、心打たれる…



陽音は、それぞれの方向に 深く 深く 一礼をした。




ずっと続いている拍手喝采に、
陽音は、 これほどの感激があるだろうか…と、
人生を感じた…



そんな なかなか味わえない 感じたことのない感覚を覚えながら、
陽音は見上げ、恵倫子を見つめる。

それを感じ取って、恵倫子が、陽音へ頷きながら
皆と一様に、
いや、より一層の拍手を送る。

それを感じ取りながら、
視線を移し、
陽音が、感慨深く 観客席を眺めていると、



突然に 観客席から 「せ~の!」 と掛け声がして、


一斉に、

「初の ワールドツアー、無事に成功、おめでとう!!

そして、

ありがとう!!!!!」


と、陽音に贈られた。


予期せぬ突然のことに、陽音は、とても驚く。


恵倫子の周辺の席でも
知らなかった人が多数いた様で
恵倫子も同様に この一斉さにびっくりしたが、

ラストという今日は 今日しかなく、
贈るべき場所…

“ 会員達で準備してたのかなぁ… ”
と、
素敵なものが見れたことに、
見ている側の恵倫子も
とてもあたたかな気持ちになった。

周りも同様な雰囲気で、拍手が湧く。


陽音は、
びっくりしながらも、はにかみ混じりの満面の笑顔と
感動の涙目で、深く 深く深く… 一礼をした。


サポートメンバーたちが、目の当たりにした 微笑ましい光景に 袖から 拍手を送る。


そんな彼らに 手招きをする、陽音。

「あぁ~もう、泣いちゃう!
皆 出てきてよ、一緒に泣こう!」


陽音の 無邪気な声掛けに、
メンバーたちは、微笑みながら ステージへと出た。

彼らに 大きな拍手が送られる。


ふと、
一緒になって手を叩いている 響に気づいた。

いつの間に起きてたの?と思いながら、
恵倫子は、響に顔を近付けて微笑む。

響は拍手をしながら、
小声で「すごいねぇ」と恵倫子に語り掛ける。

恵倫子は、
最後を響と共有できたことに 幸せを噛み締めた。



ざっくばらんになったカーテンコールのなかで、
陽音たちと観客たちの間に、
あたたかな親近感が生まれたよう。


そんなあたたかな雰囲気のなかで、
陽音は、涙ぐみながら
サポートメンバーを ひとりずつ紹介し…

愛の籠った拍手のなか、

1階席の各方向と
見上げた2階席の各方向へと顔を向けながら、
観客たちに手を振って応えたり…

そして、
最後に、
改めて 深い一礼をし、




感動の共有のなかで、

静かに 幕は、閉じられた ーー
















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