struck symphony
背後で音がして、携帯電話を耳に当てたまま
振り向くと、警備員が、会場扉の施錠をしていた。



「あ…、入り口、閉めてる。
もう誰も居なくなったみたい」

「じゃあ、今からそっちに行くよ」

「うんっ」


恵倫子の心が、弾む。


「あっ、恵倫子、外に出てたんだよな。
雨に濡れてないか?ゆらちゃんもっ」

「大丈夫っ、軒下にしたから」

恵倫子は、抱っこしている響の寝顔を見ながら、
射してきた光に気付いて、ふと 見上げた。


「わぁ~…」

「どうした?」


「虹!

満月の近くに…、
こんな虹、初めて観たぁ~……綺麗~…」


「あっそうなんだねぇ。今からそっちに行ったら、
まだ観れるかな」

「間に合うかも!来て来てっ、一緒に観よっ」

「うんっ」



陽音は 電話を切ると、地下駐車場から
逸る心とともに R8を走らせた。



エントランス前に差し掛かると、
響を抱っこした恵倫子が、
夜空を見上げているのが見えた。


その立ち姿は、月光のなかで、とても幻想的だった。


陽音は、傍らに車を停め、速やかに運転席を降りる。


恵倫子が、陽音へと視線を移して、
満面の笑顔で手招きをする。



響を優しく抱き上げながら、
ふたりは 並んで、
彩り照らされる 満月の夜空の橋を 静かに見上げた…




蒼白と弓飾りの 美しい共鳴 ーーー





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