恋は手紙と。
 支度の終わった鞄を机の上に置いて、膝の上にのせた手をぎゅっと握る。


 ホームルームは終わり、教室からはクラスメイトが出ていく。


 梶木くんは、席で文庫本を読んでいた。


 私たち以外の最後の一人が、友達同士で賑やかに出ていく。


 沢村くんは、いなかった。


 みんなと同じように、もう帰っていってしまったのだろう。


 椅子を引いて、立ち上がった。


 ガタッと音がする。



 「梶木くん……?」



 「あ、宮野さん」



 「呼び止めちゃって、ごめんね。ちょっと聞きたいことがあって……」



 「ううん、全然いいよ」
< 72 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop