私の日常が崩れる日
「君の目…研修医時代と同じ目をしてる」

「そ、そうですか?」

半分、驚きながらも納得できる。

やっぱり、先生には叶わないなぁ…

それから、昔話で盛り上がっているとチャイムがなってしまった。

「あらら、長いこと話し込んじゃったみたいね」

「そうみたいですね」

先生との話は楽しすぎて時間を忘れてしまったようだ。

「中川君、この後、予定はある?」

「いえ、後は自宅に帰るだけです」

「黒川美夜は直ぐに学校を出るわ。寄り道もしないで真っ直ぐ駅に向かうの」

先生は僕と目を合わせずに外の景色を眺めるように話す。

「あらやだ、私ったら独り言が大きすぎたわ」

くすくすと笑っているが直ぐに言いたい意味が分かった。

「じゃ、僕は急用が出来ましたのでそろそろ失礼します」

そう言って部屋を出ようとしたら先生から呼び止められた。

「私の生徒を半端な気持ちで救おうとしないで」

「えぇ、分かっています」

先生は返事に納得したのかにっこりと笑った。

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