fantasista 2
「あー……もうこんな時間」
戸崎は時計を見て、嫌そうに顔を歪めた。
不動産屋の壁に掛けてある白い時計は、正午を過ぎたところだ。
「俺、もう行かねぇと」
残念そうな戸崎に、残念そうなあたし。
こうやって戸崎をひとりじめしたいが、それは出来ない。
戸崎は今日の夕方から、大切な試合を控えているのだから。
「お前……今日は来るのかよ」
戸崎は少し頰を染め、髪を搔き上げる。
戸崎が照れている時の癖だ。
そんな癖さえたまらなく愛しい。
「うん、行くよ!」
「そうか……」
戸崎はあたしの大好きな笑顔でこっちを見る。
その笑顔を見るだけで、また胸が甘い音を立てる。