fantasista 2
戸崎はヒーローインタビューを終え、サポーターに向かって手を上げていた。
そしてそのまま、ゆっくりこっちに歩いてくる。
少しずつ、少しずつ大きくなる戸崎。
ユニフォームから覗く、日に焼けた手足。
汗で濡れた茶色の髪。
血管の浮き出た首筋。
その全てが愛しい。
三万人のサポーターを虜にした戸崎が、だった一人のちっぽけなあたしの元へと歩み寄る。
初めて間近で見るユニフォーム姿の戸崎は、いつもの優しい笑みであたしを見た。
その笑顔が眩しくて。
胸が締め付けられて倒れてしまいそうで。
「……なんか用?」
照れ隠しに、ひどい言葉を吐いてしまったあたし。
そんなあたしの言葉に、面白そうに戸崎が笑う。
「だってお前、今日誕生日だろ?」