fantasista 2
だが……
「腰、まだ完全に治ってねぇだろ」
戸崎はあたしの髪に触れながら言う。
「時間はたくさんある。
まずは、元気になることだけ考えろよ」
戸崎は優しくあたしを抱きしめてくれた。
その強い身体に、甘い香りに、優しい息遣いに酔った。
そして、戸崎の胸の中で心地よい眠りに落ちていった。
世の中に、こんなにも愛しいものってあるのだろうか。
五年前は、どうして気付かなかったのか。
いや、五年前とは明らかに変わったんだ。
溺れる……
まさにその言葉の通り、あたしは戸崎から抜け出すことが出来ない。