fantasista 2
梅雨の空はどんより暗くて、今にでも大粒の雨が降り出しそうだ。
そんな中をピンヒールで颯爽と歩く。
早く仕事を終わらせて、家に帰ろう。
戸崎に会いたくて仕方がないんだ。
今日はどんなご飯を作ろう。
いちごアイスくらいは食べてもいいよね?
資格の勉強もしなきゃ。
頭の中は戸崎のことでいっぱいだ。
あたしはいつから、こうも恋する乙女になったのだろう。
戸崎のことばかり考えて歩くあたしを、
「あの……みどりちゃん?」
急に呼ぶ男性の声。
大好きな戸崎とは違う声で、剛君かと思い、あたしは固まっていた。
だが、あたしの前に立っていたのは身体が大きくて、チャラく目立つ剛君ではなくて……
遠慮がちにあたしを見る、
「……樹君?」
だったのだ。