その恋、記憶にございませんっ!
キジも鳴かずば撃たれまいに……
酔って、道端に立っているフライドチキンのおじさんを連れて帰ったつもりだったんです。
でも、目を覚ましたら、そこに居たのは、スーツを着た男の人でした――。
しかも、
「お前が結婚してもいない相手とは嫌だと言うから」
婚姻届にサインがしてあるようです。
「あの、私、来月結婚するんですけど」
「重婚罪だな」
「借金のかたに結婚するんですけど」
「相手の会社を潰そう」
この人、何処まで本気なんでしょうっ!?
しかも、あのおじさんとはまったく似ていない男前で、白いスーツも着ていません。
なんかこの安アパートに不似合いなくらい神々しいですっ。
折りたたんだ布団の横に正座する唯の前に立ち、その男は、
「俺の名前は、三上蘇芳。
生まれてこの方、俺の人生に間違いなどなかった」
そう宣言する。
いや……今、現在間違ってますよねー。
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