その恋、記憶にございませんっ!





 お昼休み、公園のベンチはいっぱいだったので、花壇を囲む石の縁に腰掛け、みんなでコンビニで買ったアイスを食べていた。

 お日様であったまった石がじんわりお尻をぬくめてくれる。

 まるで岩盤浴だなあ、と思いながら、うとうとしそうになる。

「……で、あんた、ずっと机握ってたの?」

 呆れたように瑞穂が言ってきた。

 今日は三人だけだったので、昨日の話をしてしまったのだ。

 もしかして、蘇芳さんにドン引かれてるかも? と思い、自分よりは経験豊かな友人たちに相談してみたくなったのだ。

「偉いわあ、蘇芳さん。
 よく、そんな訳のわからない女に手を出したわね」
と千花が言ってくる。

 そうか。
 偉いのか、蘇芳さん。

「でもわかる」
と瑞穂が言った。

「初めてのときって緊張するし、どうしていいのかわからないから、突飛な行動に出ちゃったりするわよね」

「瑞穂っ」

 おお、仲間よっ! と思い、唯は瑞穂の手を握ろうとしたが、
「でも、さすがに、テーブルは持ってかないわよ」
と言われてしまった。






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