その恋、記憶にございませんっ!
 それにしても、なんだか役者が違い過ぎて、弱いものいじめをしてるようにしか見えないんだが。

 なんというか。

 コブラVSマングースで争っているところに、いきなりやって来た虎が両方とも踏みつけてしまいましたみたいな……。

 だが、そう思う唯の前で、慎吾は言った。

「今はそうでも、長い人生、なにが起こるか、わからないじゃないか」

 そうだそうだ、と言った翔太を見、蘇芳は、

「お前はとりあえず、自分の言葉でしゃべれ」
と翔太をバッサリ切った。

「それから慎吾」
と蘇芳は慎吾に向き直り、

「人生長かろうが、短かろうが、唯はずっと俺の物だ」
と言う。

 唯は耳を塞ぎたくなった。

 どきりとなんてしませんよー。
 
 ええ、絶対。

 もう一回、今の聞きたいっとか思ってませんよー。

 ええ、ほんとに。

 だが、そこで、ふふふと笑った蘇芳は、懐から折り畳んだ紙を出してくる。

「実は唯と俺とはもう婚姻届を書いているのだ」
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