その恋、記憶にございませんっ!
「本物か?」
と翔太が訊いてくる。
本物だ、と蘇芳は広げて見せようとする。
「最近、俺がわけのわからないことを言っては、人を煙に巻くという噂が出回っているようだが――」
いや、それ、噂じゃないですよねー、と思う目の前で、蘇芳はそれを広げてみせた。
蘇芳のサインと唯のサイン。
直筆だ。
ばっちり印鑑まで押してある。
何故っ!?
唯はその紙を奪うようにして、凝視する。
……確かに自分の字だ。
何故だ?
あの時点ではまだ、私はこの人をフライドチキンのおじさんだと思っていたのではないか?
私はフライドチキンのおじさんと結婚してもいいと思ったのか?
「唯、印鑑はよく見て押さないと」
と慎吾はまるで詐欺商法に引っかかった人を教え諭すかのような口調で言ってくる。
蘇芳はそこで一人笑い、言い出した。
「だが、この婚姻届、まだ完成ではない。
証人のサインが居るからな。
宮本と、唯の関係者の誰かにしようと思っていたんだが。
お前達二人、書いてもいいぞ」
「書くかっ!」
と翔太が叫ぶ。
と翔太が訊いてくる。
本物だ、と蘇芳は広げて見せようとする。
「最近、俺がわけのわからないことを言っては、人を煙に巻くという噂が出回っているようだが――」
いや、それ、噂じゃないですよねー、と思う目の前で、蘇芳はそれを広げてみせた。
蘇芳のサインと唯のサイン。
直筆だ。
ばっちり印鑑まで押してある。
何故っ!?
唯はその紙を奪うようにして、凝視する。
……確かに自分の字だ。
何故だ?
あの時点ではまだ、私はこの人をフライドチキンのおじさんだと思っていたのではないか?
私はフライドチキンのおじさんと結婚してもいいと思ったのか?
「唯、印鑑はよく見て押さないと」
と慎吾はまるで詐欺商法に引っかかった人を教え諭すかのような口調で言ってくる。
蘇芳はそこで一人笑い、言い出した。
「だが、この婚姻届、まだ完成ではない。
証人のサインが居るからな。
宮本と、唯の関係者の誰かにしようと思っていたんだが。
お前達二人、書いてもいいぞ」
「書くかっ!」
と翔太が叫ぶ。