その恋、記憶にございませんっ!
「面白い奴だ」
と言う蘇芳につい、硬い表情のまま、

「……では、面白くなくなったら、捨てられるのでしょうか?」
と訊いてしまう。

「そんなこともないが。
 お前が面白くなくなることはまずないと思うが」
と蘇芳は言った。

 蘇芳はそこで、テレビをつけた。

 なにか間が持てなくなったか、照れたらしい。

 最近は少し、そういう心の動きが読めるようになっていた。

 テレビを見ている蘇芳の横顔を見ながら思う。

 あの晩、私は婚姻届にサインをしていた。

 この人と結婚してもいいと思ったのでしょうか?

 ……いや、相手が人だと理解していたかは謎なのだが。






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