その恋、記憶にございませんっ!
「貴女と最初に此処へ戻ってきた晩、プロポーズらしいプロポーズは出来ませんでしたが。

 馬には乗ってみよ、人には添うてみよと言うじゃないですか」

 ……それ、さっき、聞きました、と思っていると、蘇芳は唯の手を取り、言ってきた。

「ぜひ、私に乗ってみてください」

 いや……貴方、人ですけど、と思ったのだが、言っては悪い気がして、そのまま黙って、手を握られていた。







< 252 / 266 >

この作品をシェア

pagetop