その恋、記憶にございませんっ!
「俺の婚約者だ」

 道で拾ったんだ、と蘇芳は宮本に鞄を預けながら言う。

「またまた」
と宮本は笑ってみせた。

「ちっ、違いますよっ」
と唯が慌てて言うと、ですよねー、と宮本はまた笑う。

「私が拾ったんです」

「……より話をややこしくするな。
 来い、唯」
と言いながら、蘇芳はさっさと二階に上がっていってしまった。

 つ、ついて行っていいのだろうか? と宮本を振り返ると、自分と蘇芳に向かい、頭を下げていたので、視線が合わず、仕方なく、唯は蘇芳の後をついて行った。






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