365日、いつまでもふたりで
「ごめんなさい、聞くつもりなんかなくて……」



それだけ言うと、茜は走っていく。



「あか……夕凪!」



俺はこんなときも、部下に知られるわけにはいかなくて。
〝茜〟とは呼べない。
本当は、茜にすぐに駆け寄って、抱きしめて、涙を拭ってやりたいのに。

絶対に泣いてるって分かるのに。

でも、ここにいる部下の林田のことを放っておくこともできなくて。



「あれ、茜ちゃんなにか落としていったけど、須坂さんへの差し入れかな?」


「あー……俺が残業なるからなんかもってきてくれるって言ってた」



林田が拾った紙袋を受け取りにドアへと歩く。



「なんか変なところ見られちゃったなぁ」



照れくさそうにそう言って、俺に紙袋を差し出す。



「とにかく、お前はもう帰れ」



紙袋を受け取りつつ、そう林田に告げる。



「え……?」


「お前がここにいることを悲しむやつが俺にはいるから。ごめんな」



林田の気持ちが俺に向いているなら、こうして誰もいない部屋に二人きりでいることなんてできない。

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