この声が消えても君に好きだと伝えたい。
あれから、案の定風邪を引きました。
昔から風邪を引くと中々治らない私は
すぐにタオルと傘を返しに行くこともできませんでした。
「うぅ…体だるいっ、!」
重たい体を起こして、近くに置いてあった
男の子が貸してくれたタオルを手に取った
「ん…?」
タオルの端に白い糸で名前が刺繍されていた
「佐野……斗真くん」
ああ、あの男の子斗真くんって言うんだ。
あー早く返さないと困ってるよな…
それにしても優しい人だったな
そんなことを考えながら、机の上にタオルを置いて
また眠りに落ちていった
2日後、ようやく体調がもとに戻った私は
タオルと傘を持って
お弁当屋さんのところへ行きました。
今思い返すと、その時にはもう
斗真くんに対して特別な感情を持ってたのかなと思う。
お弁当屋さんへ向かう足は
不思議と軽くて、いつもよりも足早だったから。