この声が消えても君に好きだと伝えたい。
対面式が終わり、教室に戻って
梨香と机をはさんで向かい合わせになった
「んで?なに、話って」
「あのね、梨香。もしもの話ね?」
「うん?」
「もしも、昔会った人に貸しがあって、その人と同姓同名の人が自分の前に現れたら、梨香はどうする?」
「…あー、なるほどね」
「つまり、佐野斗真くんという男の子に昔会ったことがあり、何らかの貸しがあった。そしたら、今日同姓同名の ゛佐野 斗真くん ゛が現れた。さあどうしよう?ってことでしょ?」
「うん……ってうぇえ!?」
なんで分かるの!?梨香ってエスパー!?
「なんで分かるのって顔してるけど、あんた佐野くんの名前出してからおかしいし。」
「え、うそ。」
確かに斗真くんの名前を聞いてから
話し声も右から左へ抜けてって
何も考えられなかった。
「んで?佐野くんに貸しってなに?」
「ああ、それはねっ」
私は事細かに梨香に伝えた。
土砂降りだったあの日タオルと傘を貸してくれたこと
知らないうちに引越してたこと
まだタオルと傘を返せていないこと
「それ、佐野くんに返すべきでしょ」
「でも、私の知ってる佐野くんじゃないかもでしょ」
「そんなの、聞いてみなきゃ分からないじゃん」
「うーーーん…」
「佐野くんは、B組だよ」
私達のクラスはF組
そりゃ、こんだけクラス離れてたら分かるはずもない。
そして、その次の日の放課後
私はぎゅっと手を握りしめて
B組の前に立っている。
佐野くんから貸してもらったタオルと傘を持って。