愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
「言われなくてもわかっている」

そう言うと副社長は私の一歩手前まで来ると、今度は間近で私を眺め始めた。

「えっと……副社長?」

さっきの言葉の意味はなに? それにこんなに間近で見つめられると、顔から火が出るほど恥ずかしいのだけど!

耐え切れなくなり声を絞り出すと、彼は「行くぞ」と一言だけ言うと、強引に私の肩に腕を回してきた。


「――え、キャッ!?」

一瞬にして密着する身体。彼のぬくもりが嫌でも感じられてしまい戸惑いを隠せない。

「あの、副社長っ……!?」

「愛里、この礼は後で。失礼する」

「はーい、気をつけていってらっしゃい」


副社長は私の声に被せて言うと、手をひらひらさせて見送る佐々木さんを尻目に、私の肩を抱いたまま歩き出した。

えっ、えっ!?

肩を抱かれたまま足を進めるも、自分の今も状況にパニック状態に陥ってしまう。


どうして副社長ってば、私の肩を抱いちゃっているの?

密着する身体に変な汗が流れてきてしまいそうだ。お店を出たところで限界に達し声を上げた。

「副社長、あの……!」

「急ぐぞ。遅刻はできないから」

最後まで言わせてもらえず声を被せられると、副社長は近くのパーキングに向かって歩を進めるばかり。

遅刻できないのはわかるけど……っ! この距離間、どうにかならないでしょうか!?

奇想天外な彼の言動に振り回されながら、副社長についていくしかなかった。
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